「まつ毛エクステ」ご用心
(2010.5.11)
若い女性を中心に流行する「まつ毛エクステンション」。まつ毛に人工毛を接着剤で付け、長く、濃く見せる美容施術だが、目の炎症など健康被害の訴えが後を絶たない。
事態を重く見た消費者庁は2月、危険性の周知や安全確保の対策を厚生労働省に要請した。背景に何があるのか――。
「他店で『まつ毛エクステ』をしたら、違和感があって……」。2月下旬、東京都大田区の美容室「SHIGE」に来た女性が訴えた。美容師の枝折(しおり)繁さん(61)は女性のまぶたを見て、あぜんとした。まつ毛に付けるはずの人工毛が、まぶたに直接付いていた。
まつ毛エクステは、まぶたに張る「つけまつ毛」とは違い、まつ毛1本1本にシルクや化学繊維でできた人工毛を接着剤で付ける施術。美容師法により美容師資格を持つ人しか行えない。エクステンションには「延長」などの意味があり、まつ毛の根元部分に人工毛を付け、まつ毛を延長するのが一般的な方法だ。
付ける人工毛の本数は個人差があるが、両目で80~100本程度が一般的。施術は時間にして40分~1時間かかり、料金は1万円前後が相場。ただ、まつ毛も髪の毛のように日々伸びており、通常は3か月程度で抜けて生え替わるため、人工毛も3~4週間ごとに付け替える必要があるという。
枝折さんは、まつ毛エクステを始めて6年余になるが、実際にお客さん相手に施術をする前に約1年間、人形で練習を積んだ。「目は敏感な器官。相当な訓練を積んだ上で、細心の注意を払って施術をする必要がある。髪のカットより難しいと考えていい」と話す。
独立行政法人「国民生活センター」によると、健康被害相談が寄せられるようになったのは2004年度から。目の充血や炎症を訴えるケースがほとんどで、人工毛が角膜を傷付けたり、接着剤が目に入ったりしているとみられる。相談は年々増え、昨年度は88件で、過去最高を更新。同センター危害情報室の青山陽子・室長補佐は「実際の被害は相談件数の数十倍に及ぶ可能性がある」とする。
まつ毛エクステは美容師学校では必須科目になっておらず、技術が身についていない美容師も少なくない。美容師の資格がないのに施術をして、警察に摘発されたケースもある。このため、厚労省は技術を担保するための仕組み作りを検討している。東京都内の美容所経営者でつくる「都美容生活衛生同業組合」(会員約5000人)は機関紙で注意を呼び掛けた。
東北大の阿部恒之教授(心理学)は「まつ毛は女性らしさを強調する重要な部位の一つだが、美しさを追求する前に健康へのリスクをよく考えることが大事だ」と話している。
参考URL:http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/20100511-OYT8T00356.htm
